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ヘタノヨコズキ

ライフハックと手帳、ときどきうさぎとフェレット

「知覧からの手紙」という本

本は随分片付けてしまって、私の部屋には本棚らしい本棚はありません。それでも何冊かはいつでも手に取れるように置いています。  

今日は、その中から一冊の本をここで紹介させていただきます。  

「知覧からの手紙」

  
穴澤利夫さんという人をご存知でしょうか。
特攻隊で命を落とした方です。有名なのは遺書かと思いますが、おそらく多くの人が、穴澤さんと知らずに1枚の写真を見たことがあるんじゃないかと思います。  

「なでしこ隊」と呼ばれた知覧の女学生たちが手を振る後ろ姿が手前に写っている。
その奥に写るゼロ戦と、操縦席で敬礼する特攻隊員。 この特攻隊員が穴澤利夫さんです。検索すればすぐ画像が出てくると思います。
特攻隊のドキュメンタリーはたくさんありますが、私が初めて穴澤さんを知ったのは「なでしこ隊」を題材としたテレビドラマでした。

そのドラマの中で、穴澤さんの写真、遺書が紹介され、そして婚約者であった伊達智恵子さんという女性が出演されていました。
穴澤さんのエピソードと遺書が強く印象に残り、智恵子さんを取材して書かれたこの本にたどり着きました。

 

穴澤さんと智恵子さんの出会いから、もじもじしつつも手紙で距離を縮めていくふたりの様子は微笑ましく、見てるこっちが照れるくらい純粋。
この手紙の内容がちょっと信じられないくらい美しいんだ。昔の人の手紙ってみんなこんな感じだったのだろうか。まあこのおふたりは本が好きで図書館の講習所で出会ったくらいなので、お手紙も文学的になるんだろうけども。
 

やがて穴澤さんは航空兵に志願。ふたりは離れ離れになる。

 

男の人は国のため大切な人のために戦地へ赴き命を落とすのが当然、女の人はそれを喜んで見送らなければいけないという時代でした。
今とは価値観が違いすぎる。私たち現代人には理解できないことがたくさんあります。
しかしたとえ価値観は違えど、人を好きになる気持ちはいつの時代も同じこと。  
 

ふたりが離れ離れになってからは、読み手側はまるで智恵子さんと一緒に穴澤さんを想い、追いかけてるかのような錯覚を起こします。
会えれば自分のことのように嬉しくなるし、悲しいことがあればこっちも悲しくなって落ち込む。ドキドキして手紙を読んだり、不安になったり。
著者の書き方の上手さも相まって完全に智恵子さんに感情移入した状態になり、時間を忘れて最後まで一気に読んでしまう。

 

穴澤さんの遺書の最後には、こう書いてある。

智恵子 会いたい、話したい、無性に

 
戦争がなければこんなことにはならなかった。ふたりはきっと引き裂かれることはなかった。若い人たちのこうした純粋な気持ちを、戦争が摘んでいってしまった。
そういう意味での恐ろしさはものすごくあるし、こんな恐ろしいことは二度と御免だと改めて思わされます。

ただ、戦争の恐ろしさを伝えるものは他にもたくさんあって…
たくさんある中で私がこの本を特別大事に持っているのは、それ以上に気付かされたものがあったから。  
 

私がこの本を初めて読んだのは、20代半ばの頃だったと思いますが。
智恵子さんの一途な気持ち、懸命な姿。穴澤さんの「あなたが幸せなら何もいらない」と言えるほどの、智恵子さんを想う真っ直ぐな気持ち。時代の波に飲まれ不自由をし、死を目の前にして葛藤しながらも、互いを想い、想いやることをふたりは忘れなかった。
人を愛するってこうゆうことなんだと、衝撃を受けたのです。
それは自分の中に最初からなかったのか途中で消えてしまったのかはわからないけど、とにかくその頃の自分にはない感情でした。

 
今は、家族や友人や好きな人が目の前にいて当たり前の時代。 離れていて会えなくても電話すれば声が聞けるし、ネットで顔を見ながら話すこともできる。
それがどんなに幸せでありがたいことか、私たちはついつい忘れてしまう。

ふと読み返すたびに「ちがう、そうじゃないんだよ」と、この本が教えてくれます。 
 

世代を問わず、特に若い人に手に取って欲しい1冊です。    

 

今週のお題「わたしの本棚」